テキサス自宅待機日記③(3月28日〜29日)(ヨシオ カサヤカ)
前回までの更新はこちら
(https://www.youtube.com/watch?v=_yk_kNtQ638)
3月28日(土)
NBCニュースを見ていたら、合間に局が作ったメッセージ映像が流れてきた。あの有名な、硫黄島で星条旗を掲げる兵士たちの写真や、米国内の軍需工場で働く女性たちの白黒映像に続いて、現在COVID-19対策で現場で働く人々、マスクをミシンで縫う人たちの映像が入る。そして「国民のみなさん、力をあわせてこの苦難を戦いましょう」といったナレーションが入る(注:ナレーションの文言について記憶が不確かなのでYouTubeを検索してみたが、まだアップされていない様子→ 編集追記:見つけました!「75年前の今週、硫黄島における日米軍の組織的戦闘が終結」したことを記念した映像のようです。)。
ウィルスとの戦いを戦争になぞらえて語るのは珍しい表現ではないけれど、リベラルなNBCニュースがそれをやるのが意外だった。そして、米国人が誇りを持てる過去の戦いのイメージは、この硫黄島の星条旗なんだなあ、と感慨深かった。
今テレビで流れるこの印象的な硫黄島の写真を見て、「なんだか日系人や日本人への敵対心が蘇ってきたぞ!」と思う米国人は、ほぼいないと思う。仮にいたとしたら、全くこのCMの意図を理解していない稀な人である。それでも、ウイルスとの戦いを過去の戦争に重ねた語りがこうしてメインストリームのメデイアで流れ始めると、既にコロナウィルスの発生地と絡めてのアジア系差別がある中、米国市民ではない私は、どういう立場でこれを受け止めればよいのか少し複雑な気持ちになる。
3月29日(日)
27日のニューヨーク州知事の会見がやはり心に残り、多くの人に読んでもらいたいと思った。最後の州兵への呼びかけは、米国のニュース記事でも読める他、日本語字幕をつけてYoutubeに投稿してくださっている方もいる。
そのスピーチに入る直前の、目立たないが個人的にぐっと来る部分を和訳してみた。
(英語原文)
この一節では、「NYではタフではなきゃ生き残れない、でもタフなぶんだけ我々は愛情も深い」という街への愛がこもったメッセージから始まり、そこから自然にボランティアの貢献に話題を移し、最後にメンタルヘルス支援の重要性に持っていく。数分のうちにテーマが動いていくテンポの良さがある一方で、一つ一つの話もきちんと中身がある。特に、「家族と一緒にいるのも、ストレス溜まりますよね」という、当たり前のことだけど、なかなか政治家が口にしないことをはっきりと伝えているのが、すごいなと思った。誰も先行きが見えない今、「そりゃ、皆さんストレス溜まりますよね」と個人の苦しみを認めてくれるほうが、大統領のように「来月のイースターにはビジネス再開できる」など根拠のない希望を煽るよりはずっと信頼できる。
この危機のさなか、我々がニューヨーカーの皆さんから頂いている支援の大きさは、ただただ素晴らしいものです。私は生粋のニューカーです。私のクイーンズ訛りがおわかりになるかわかりませんが、私はみなさんのブルックリン訛り、マンハッタン訛り、スタテン島訛りがそれぞれ分かります。ニューヨーカーの皆さんは、その心の大きさでつねに私を驚かせてやみません。ニューヨーカーはタフだと言われます。ええ、こんな場所で生きるにはタフでなきゃいけません。でも、我々はタフであると同時に、愛情深く、大きな心を持っています。そして誰かが何かを必要とするとき、ニューヨーク以外の場所は私には考えられません。
そして、ボランティアをしている人々の数。私たちは医療スタッフの増員を呼びかけました。呼びかけにより、62,000人のボランティアが現れました。1日で、その数は1万人増加しました。なんて美しいことでしょうか?……(中略)……
同様に、我々はメンタルヘルスの専門家にも、電話やスカイプなどを通した遠隔でのメンタルヘルス支援のボランティアを呼びかけました。多くの人が、メンタルヘルスの課題を抱えています。 現在は、誰にとってもストレスフルな状況です。そして自宅で隔離されている。あなたは家にいて、来る日も来る日もずっと家にいなければいけないわけです。これはストレスが溜まります。あなたは何が起こっているのかわからず、外出をするにも不安がある。家族と一緒に社会から隔離されている、これはストレスが溜まる状況です。
家族といるのが嫌だ、というわけではありません。ただ、家族と一緒にいることもストレスになりえます。そして外出できる場所もなく、このストレスについて話し合える人もいません。だからこそ、電話でのメンタルヘルス支援は、とても、とても重要なのです。
今から、この部屋の中で一番重要な方々、私の背後にある素晴らしい施設(州兵が建設した緊急仮設病院のこと)を作ってくださった人々について話したいと思います。……
(*以後、NYの感染対策支援に投入された州兵への謝辞と鼓舞のメッセージに入る。)
(……3月30日に続く)
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